« 2008年10月 | トップページ | 2008年12月 »

2008年11月

2008年11月24日 (月)

Banyuls-sur-Mer(バニュルス・シュル・メール)

ついにバニュルスにやってきました。
いやぁ、ここはいいですよ。
ぼくはほんとに大好きですね。一番行きたい場所かもしれないです。

さて、バニュルスはスペイン国境まで車でほんの数十分の場所にあります。
小さくてきれいな海岸と緑豊かな山に囲まれた小さな街です。
前回お話ししたコリウールよりもスペイン寄りですね。
ペルピニャン方面からですと、アルジュレスから山に入り、コリウールを過ぎて、ポール・ヴァンドルという港町を過ぎるとその次がバニュルスです。バニュルスを過ぎると次がセルベールという街ですが、これが正真正銘国境の町なので、本当にフランスの西のはずれと言っていいでしょう。

バニュルス・シュル・メール(バニュルス海の上)という名前の通り、この街は海に面して開けています。
アルジュレスやアグドのように、街の本体が内陸にあって海岸沿いは別の街、ということはありません。この海沿いの街がそのままバニュルスです。

Dscf0030

--

バニュルスと聞いて、「あのワインのバニュルス?」と思われた方がいらしたら、相当なワイン通の方です。そう、バニュルス・ワインは知る人ぞ知るこの地域の名産品なのです。
日照量が高く、乾燥しているため、糖度の高い甘いワインができます。色も独特で、いわゆるワインレッドというより、琥珀色とまでは言いませんが、もうちょっと茶色系統の色が濃いくすんだ色をしています。
このあたりでも高級品なようで、普段はあまり飲まず、何かのパーティーの時などにバニュルス・ワインが振る舞われていました。(「おお、今日はバニュルスか!」みたいなノリでした)

Dscf0250
左側のボトルがバニュルス・ワインですね。
こういう、ちょっと肩幅の広いボトルに入っているのが多いみたいです。
--

バニュルスで有名なのは彫刻家のマイヨールです。海に潜るジャック・マイヨールではありません。アリスティド・マイヨールです。このマイヨールが、ここバニュルスの出身なんですね。
ご当地の有名人ということで、ちゃんとバニュルスの山の中には「マイヨール美術館」というのがあります。

結構な山の中で、こんな道を小一時間歩きます。
Dscf0021

そして到着した美術館はこちら。
Dscf0024

「家・・?」って感じもする、こじんまりした美術館です。
なお、マイヨールの作品は女性をモチーフにしたものが多いのですが、シルエットが比較的ふっくらしていることでも知られており、このあたりではちょっとふくよかな女性のことを「マイヨール」と呼んだりしています(もちろん、本人に言ったりしません、はり倒されます)。

美術館の入り口
Dscf0028

--

バニュルスは、実はわたくしの母が南仏に移ってきたときに最初に住んだ街なんです。パリからここバニュルスに移ってきて、その後サンタンドレに引っ越しました。
ですので、わたくしも初めて来た南仏の街はここバニュルスでした。
その時の感動が、やっぱり今でも残っています。

空の澄み渡って深い青、海の吸い込まれるような碧、山一面に広がるぶどう畑の緑の美しさ。
ぶどう畑の中にぽつんとある、1000年近く前にできた、石造りの何気ない小屋。
海を見ながら食べるおいしい食事。
プロヴァンスカラーの壁に南仏瓦のきれいな街並み。
ゆっくり流れる時間。

ここは、住みたいです。いつか住むなら、こういうところだなと思います。
街もそれほど大きくなく、かといってコリウールほど完全に見せるための街ではなく、必要十分な機能を備えながら、人生が美しくあるための全てのものが揃っている、そんなところです。

Dscf0039

--

そんなバニュルスの魅力はなかなか語り尽くせないのですが、ここは過去に撮った写真がいっぱいありますので、いくつかご紹介しながら行きたいと思います。

まずはバニュルスといえば海です。
この海岸の風景がいかにもバニュルスっぽいですね。

Dscf0060

特徴は、正面に見える橋桁のような下り坂です。
コリウール方面から来て、岬をぐるりとまわって、降りてくる道がこれです。
向こうから車で来るときは、岬を回ると同時にこのバニュルスの浜辺と街の景色がぱーんと開けてきます。
浜辺からこの橋桁を見る構図がバニュルスの絵や写真などでは非常にポピュラーだということになっております。

ちなみに、その橋桁の先にある岬の上から海方面を撮った写真がこちら。
Dscf0031

この向こうは、アルジェリアかチュニジアか・・・と夢ふくらむところですが、実際にはこの正面はマルセイユとかトゥーロンです。このあたりは、ちょうど、地中海岸が南に向かって曲がっているところなので、東向きなんですね。

なんか、軍艦みたいなのがいました。
Dscf0032

この岬の近くにはバニュルス・ワインのお店がありましたね。

--

この岬からバニュルスの浜辺をはさんだ反対側はすぐまた断崖になるのですが、その先にちょこちょこっとしたプライベート・ビーチ風なかわいい海岸があります。
結構人気で、みんなやってきて泳いでいます。

Dscf0043 Dscf0046 Dscf0050 Dscf00441

がけの上に立っている家があります。
うーん、こんなところに住んでみたいですね・・。

--

次は、山ですね。
ちょっと歩くとすぐこんな山の中になります。
Dscf0001

そして、ほとんどがぶどう畑です。
Dscf0009 Dscf0013

たまに、歩いていると収穫中の農家のおじさんがぶどうをくれたりします。
Dscf0007

なお、このあたりのぶどう畑は、ほとんどが山の斜面を利用してつくられています。というより、平地がほとんどないんですね。
とても乾いた、石ころの多い土に、背の低いぶどうの木がひしめいているという、この地方独特な畑です。
山の斜面の奥の方は車が入れないので、よく背中にかご背負って、手積みしてる風景を見ることができますね。

一度、知り合いの農場主さんに、畑の中に入れてもらったことがあります。
Dscf0051 Dscf0041 Dscf0054

--

山の中を散歩していると、こんな木がありました。これ、何の木かおわかりでしょうか。
Dscf0019

これは、コルクの木なんですね。ぼくも実物は初めてみましたが、コルクはこの木の皮をはいで作るんです。なので、この木はもうコルクをとっちゃった後、つまり毛を刈っちゃった羊みたいなもんですね。バニュルスの山の中にはこのようにむしられた後のコルクの木が(もちろん、むしられ前のもあるでしょうけど、むしられ後の方が目につくので)いっぱいあります。

--
山の上の方まで登ると(ハイキングがてらすぐに登ることができます)、街が一望できます。

Dscf0030

順々に右側(スペイン側)へ・・。
Dscf0031 Dscf0032 Dscf0033

このまわりもみんなぶどう畑なんですよ。

--

バニュルスの街も紹介します。といっても街はあんまり写真がなかったです。
メインストリートです。
Dscf0029

これは役所かな?旗がカタロニアですね。
Dscf0030_2

マルシェです。ちっちゃいけどまあものは揃っています。
Dscf0011

夕暮れの家々。
Dscf00251


バニュルス自体は割と高級住宅街です。結構、物件の値段も高めですね。
(なお、母親が最初にバニュルスに住んだときはマンションでした。やっぱり一軒家がいいなということになって、それでサンタンドレに移ったわけです)
なおかつ、リゾート地でもあり、もちろん夏場は大変な数の人々がやってきてにぎわいます。
ビーチ前にはちょっとした広場やステージがあって、なにかしらやってますね。
ホテルやレストランも多いです。
完全にカタロニア地方ですから、クレーム・カタランなどカタラン料理もこのあたりの名物です。

Dscf0178
海岸前の広場、なにやらみんな踊ってます(右側のステージには楽隊がいます)

--

ここでは、ペルピニャンに出るよりもどこに行くよりも、スペインに行く方が圧倒的に近いです。スペインの方がワインやサングリアなど安いので、よく買い物に行きました。しかし、不思議なもので、一歩スペインにはいると急に道が悪くなります。

バニュルスはSNCFの駅もあるので、来ようと思えば比較的簡単に来れます。
ペルピニャンからなら電車でだいたい35分です。コリウールからは10分、2駅ですね。
まあ、35分なんて、東京と横浜くらいですから、近いものですよね。

--

やっぱり、いつかはやってみたいですね・・・。

バニュルスに滞在して
コリウールに遊びに行って
ある日はのんびり山を散歩して
海で泳いで
おいしいもん食べて
マルシェに行って
たまにスペインに買い物行って

を繰り返してすごす、そんなくらし・・・。

--


大きな地図で見る

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2008年11月21日 (金)

Collioure(コリウール)

前回はアルジュレスについて書きました。
せっかくアルジュレスまで来たのですから、そのまま足を伸ばして、スペイン国境付近を訪れてみましょう。
というより、行かないと損です。
ここまできたら、ぜひその先の村々を訪れていただきたい。

フランスとスペインの国境近くの海岸線は、ピレネー山脈がそのまま海になだれ込んだかのごとく、切り立った断崖が多い入り組んだ地形になっています。
その断崖の合間合間にある入り江に沿って、ぽつぽつと集落が点在しています。
これらの街がですね、それはもうどれもこれも、まるでちりばめた宝石のようにすてきなところばかりなのです。
今日はその中でも特に有名な街、コリウールをご紹介します。

--

さて、アルジュレスから山に入りますと、すいすいと車は進み、すぐに断崖の上の道から海を見下ろす快適なドライブルートに入ります。
空の澄み切った青さと、深い海の色、山のぶどう畑の緑が目にもあざやかでやさしい、それはもう素晴らしい景色です。
そして、山の合間をくねくねと進んでいきますと、崖の合間の入り江に沿って、海岸沿いに小さな街が見えてきます。
これがコリウールです。

Dscf0018
山の上の方から海と街を見下ろしたところ(向こうの街はもしかしたらコリウールじゃないかもしれませんが、このあたりはまあこんな雰囲気だと思ってください)

--

このコリウールは、小さいけれどとても美しく、自然と建造物、街のたたずまいが完璧なバランスを持って成り立っている、素晴らしい街です。

コリウールの海岸は、小さなビーチがあり、まわりをぐるりと古い城砦が取り囲んでいます。この城砦がかっこいいんです。
きれいな海と城砦と、そして人々がバカンスを満喫しているこの風景の調和が見事で、どこを見ても一枚の絵のように完成されています。

城砦です
Dscf0080_2
城砦はなんだか軍の施設でもあったんじゃないかな・・・
なんか、軍人さんが訓練している風景を見た記憶があります。が、夢だったんでしょうか・・。

船がいっぱいいます
Dscf0081

船と城砦です
Dscf0082

反対側の城砦
Dscf0083

たくさんの人でにぎわっています
Dscf0084

ここは海岸です。すごい人ですね。
Dscf0088

--

後ろを振り返ると、色とりどりな色彩にあふれたコリウールの街があります。
この街はたたずまいもとてもコンパクトでかわいらしいのですが、なんといっても家々がとてもカラフルなのが特徴的です。
まるで、この地方独特の強い日差しがそのまま家になってしまったように、街全体が様々な色で彩られています。
色彩の強さが気持ちも高揚させてくれるのか、実際、街を歩いていると、なんだか楽しい気分になってきますね。

この街はぜひ写真を見ていただきたいところなのですが、わたくしコリウールは何度も訪れているにもかかわらず、なぜかいい写真が一枚もないのです・・・。
他の方が撮ったいい写真がインターネット上にたくさんありますので、ぜひ探してみていただきたいと思います。
「コリウール」「Collioure」で検索するとすぐにいっぱい出てきます。

海岸から街へ入る入り口です
Dscf0086

入り口付近です。にぎわってますね。
Dscf0087

街の写真ですが・・・
無念、真っ暗で全然わかりません・・・
本当はもっとキレイなんです・・・
Dscf0094 Dscf0095 Dscf0098 Dscf0097

--

さて、この街の自然がもたらした色彩感は、数多くの芸術家も魅了してきました。
コリウールは、マティスなど著名な画家がたくさん滞在していたことでも有名です。
いわゆる「野獣派」発祥の地としても知られております。
街や海岸にはアーティストにちなんだカフェなどもいっぱいありますね。

そして今でも、コリウールの街では、いたるところで街角で絵を描いているひとを見かけることができます。芸術が街と一体化している感じですね。なんか、確かに何かインスピレーションが後押しされる力を感じる場所ではあります。

街にはギャラリーも大変多いです。
そういえば、今でも気になっているんですけど、なんか気になる絵があったんですよね・・・。数万円くらいで、買えない値段ではなかったんですけれど、なんとなく躊躇してしまって、その場はやり過ごしてしまいました。でも、数年たった今でもまだ気になっています。やっぱり、気になったものは手に入れとかないとですね・・。

--

コリウールは小さい街ながらも観光地として大変有名なので、バカンス時期はとても多くの人でにぎわいます。
また、SNCFの駅もありますし、地方の街にしてはアクセスがいい方だと思います。ペルピニャンからだと3駅めで、所要時間25分ほどです。

自然、芸術、文化、建築、人、風景と申し分なく、観光地としても、滞在地としても、大変すてきなところですので、もしお近くにお越しの際は、ぜひお寄りいただきたいところの一つです。
もちろん、おいしいレストランやカフェもいっぱいあります。
数時間あれば一周できるくらいの小さな街ですが、できればぜひ何日かゆっくり滞在して、この街の色彩の力に圧倒されてほしいと思います。

ぼくもここは何度でも行きたいですね〜。
いやぁ、本当にいいところなんです。
実は、なんだかんだあんまりゆっくり滞在したことがないので、ぜひいつか何日か過ごしてみたいです。

--


大きな地図で見る

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2008年11月 9日 (日)

Argeles-sur-Mer(アルジュレス・シュル・メール)

アルジュレス・シュル・メールはペルピニャンからスペイン方面に20kmくらい南下したところにある海岸沿いの街です。街の名前も直訳すると「海の上のアルジュレス」ですね。
ここはもう数十分も車を走らせればスペイン、という、国境にほど近い場所です。

Dscf0036

アルジュレスの海岸は長い砂浜が続くきれいなビーチになっています。
ここをあえてひとことでいうとすると、いってみれば「フランス最後の海岸」とでもいったところでしょうか。

どういうことかというと、フランスとスペインの国境ってピレネー山脈で区切られていますが、海岸線も国境付近は山がちで、割と断崖が多いんです。
グーグルアースで見てみますとこんな感じになっております。

Argeles

ということで、ここを最後に、スペインまでもう砂浜はほとんどなくなります。
まあ、正確にはコリウールやバニュルスなどちょっとしたビーチのある小さな街が点在するんですが、いわゆる「白砂の長い海岸」みたいなのはフランス国内ではこれが最後です。

そういうわけだからというわけではないんでしょうが、ここアルジュレスは夏休み時期はそれはもう、あり得ないほどの人であふれかえります。
ヨーロッパ中から地中海の太陽求めて人々がやってくるわけです。
ビーチはもちろん、周辺には所狭しと露天が並び、移動式遊園地も多数出現し、そこら中でコンサートやらフラメンコやらのステージが行われ、それはもう大変な賑わいです。

夜の移動式遊園地です
Dscf0189

あひるつりあそびです
Dscf0196

--
雰囲気はどちらかというと、そんなに高級すぎず、割と大衆感にあふれてリラックスした感じです。
かといってさして治安が悪い風でもなく、いわゆる普通の中産階級のヨーロッパ人の方々が多く訪れているような印象です。ファミリー的な感じのひとびとや若い人々の姿が多数目につきますね。
食べ物やおみやげもそんなに高くないです。

この辺の雰囲気は前に紹介したCap d'Agde(キャプダグト)とちょっと似ているかもしれません。
でも、キャプダグドの方がリゾートとしては大規模かな?
確かに、むこうは遊園地とかもいっぱいありますしね。

--

海岸に向かう大通りには飲食店が軒を連ねています。
ここの中華料理屋さんがおいしいんですよね・・・。
フランスの中華料理屋さんって、たいがいベトナム料理とかもごっちゃになっていて、「ネム」という春巻き風の料理がとってもおいしいんです。書いてるだけで食べたくなってきちゃいました。

Map

--

さて、紛らわしいんですが、実は「アルジュレス・シュル・メール」という名前の街の本体は海岸から数キロ離れたところに位置しておりまして、今まで話していた海岸沿いの地域は、「アルジュレス・プラージュ(アルジュレス海岸)」という別の呼び方をしております。
このあたりもAgde(アグド)と似てますね。フランスの海岸沿いはこういう構成の街が多いです。

こちらの街の本体の方のアルジュレス・シュル・メールも私はよく訪れました。
隣町のSaint-Andre(サンタンドレ)に母親が住んでいたので、よく買い出しなどにやってきました。
アルジュレスは大きなマルシェをやるんですよね。街の中心部に教会がありまして、そこのまわりでやっています。

Dscf0009

Dscf0007


なにしろサンタンドレは小さいので、ちょっと何かあると隣町のアルジュレス・シュル・メールに行き、もっと大きな街に行くときはペルピニャンに行く、という感じでした。

また、アルジュレス・シュル・メールはSNCFの駅もありますので、サンタンドレに行くにはここが最寄りの駅なんです。

駅の写真です。
Dscf0171

--

駅といえば、フランスで鉄道に乗るときは、前もって切符を買っておかないとかなり大変なことになります。
日本ですと、鉄道の切符は、新幹線や特急に乗るのでもない限り、大概は田舎であっても乗るそのときに駅で切符を買ってそのままホームに行きますが、フランスでそれはかなり危機一髪です。

わたくしが前にサンタンドレの母の家に行き、これから電車に乗って帰るというとき、このアルジュレス・シュル・メールの駅で当日に切符を買っていこうとしたことがありました。
何があるかわからないので、電車出発の数時間前に駅に向かったと記憶しております。

そしたらですね、老夫婦が切符を売る窓口で駅員となにやら話をしながら切符を買っていたんです。
どうやら、どうやったら早く行けるかとか、安いとか、そんな相談をしている風でした。

それ自体は別になんてことない話なんですが、えーと、困ったことに、この相談が異常に長い。
とにかく長くて、30分やそこらの話じゃないんです。
当然ですが、長蛇の列です。
自動券売機などはありませんし、窓口もほかにはなく、この一つだけです。

窓口のおじさんも特に焦っている風でもなく、とりあえず後の人をがんがんさばくという考えは毛頭なさそうですし、誰か別の駅員を呼んできて別の窓口を開ける様子も全くありません。

かといって、当の老夫婦もゆっくりしたもので、全くもって後ろの人たちを気にかける様子はなく、かなりマイペースに(しかもけっこう談笑しながらどうでもいいことを聞いていると思われる)話し込んでいます。

ではこれがフランスの国民性で、みんなしかたないと諦めているのかというとこれまた全くそんなことはなく、ものすごい勢いで並びながら怒っています。
スペイン系のものすごい派手なお姉さんは、ものすごいジェスチャーで何かわめきながら途中でどこかに行ってしまいました。

で、小一時間の後、やっとその老夫婦は笑顔でチケットが買えて、めでたく次の人に。
ああよかった。もうとにかくよかったよかった。
これでやっとチケットが買える。もう時間がない。ここは暗黙の了解で急ぐんだみんな。

・・という思いも空しく、まるでさっきまでのことは全くなかったかのように、やっぱり何人かにひとりは必ず複雑(かどうかは不明)な案件を持ちかけはじめてしまいます。そしてすぐにまた同様に列が停滞し、みんな石のような時間をすごすことになります。
地獄です。

このときは列車に乗れたんだか何だったんだかさっぱり忘れましたが、とにかく、「当日に切符買う」だけは御法度だと肝に銘じました。

その後は必ず前の日以前に切符を買うようにしています。
でも、駅に買いに行くとやっぱり大概おじいさんとおばあさんが話し込んでいて、最低数十分並んで待つことになります。

(一度だけ、「急ぐならかわっていいよ」と言われたことがあります。悪気は本当にないようです)

--


大きな地図で見る

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2008年11月 5日 (水)

Saint-Andre(サンタンドレ)

サンタンドレとはSaint-Andre、つまり聖アンドレのことです。これはキリスト教の聖人の名前ですね。さしずめセント・アンドリューといったところでしょうか。

その聖人の名前のついた街がペルピニャンの近く、ピレネーの山の麓にあります。
ペルピニャンからスペイン方面に20kmほど南下していき、アルジュレスという海に近い街のあたりで内陸方面、右に曲がりますと着きます。
たいそうな名前の由来ですので何か大変なゆかりがある街かというと、さほどそういうわけでもなく、とりたてて観光名所などもない、ごくごく普通の小村です。

海と山に囲まれていて、鮮やかな色彩の陽光が目にまぶしい、とても環境の良いところです。
スペインもすぐそばです。
このあたりはワインもおいしいですね(ぼくはのみませんが)。

Dscf0306 Dscf0002 Dscf0016 Dscf0017 Dscf0011 Dscf0008 Dscf0091

こちらは冬バージョン。ピレネーの山に雪が積もっています。
Dscf0028 Dscf0030 Dscf0031

--

さてこのサンタンドレは、私の母が5年間住んでいました。
人生の最後に住んでいた場所です。

前にもポルティラーニュのところで書きましたが、母とアンドレはこのサンタンドレからポルティラーニュへの引っ越しを計画していました。しかし、母は病に倒れてしまい、新居の完成を見ることなく他界してしまいます。引っ越し予定日は、皮肉なことに母が亡くなった一週間後でした。

ですので、母親はこの家で、いや正確には、この家から救急車でトゥールーズの病院に入院して、そして亡くなりました。
まさに、人生の最後のかがやきがここで過ごした日々ということになります。

これが、母が住んでいた家です。
Dscf0174

庭の様子です。
Dscf0304

オリーブの木がありました。
Dscf0305


ここでの母親は本当に幸せでしたね・・。
大好きだった自然があり、大きな山があります。
車で数分も走ればアルジュレスの海です。
そして、毎日大好きなダンスをして、すてきな友達に囲まれて、おいしいものを食べて、素晴らしい旦那さんと一緒に仲良く暮らしていました。
そして、母親は何よりフランスが大好きでした。

母親は、それまでがやっぱり苦労してたんです。
女手一つでぼくたち兄弟を育てましたから、やっぱり並大抵ではなかった。
つらいことがあったのか、よく、夜中に酒を飲んでひとりで泣いていました。
子供心に、そんな母親の姿を見るのはイヤだったし、ぼくに向かって涙ながらに愚痴をこぼす母親も嫌いでした。
わかるでしょうか。そんなに、素直に全部を感謝で受け入れられるようなことばかりじゃないんです。
そして、母親はぼくたち兄弟が就職したのと同時にフランスへと旅だって行きました。
良いも悪いも全部含めた、これまでの想いが詰まったもろもろが、でも全部一緒くたになって、そして最後に美しく結実した場所、それがフランスだったんです。

母親の最期の五年間が比類なく美しかったことは、そのためによりいっそう早すぎる死を悲しくもさせ、一方では、幸福な中で人生を終えられたということがせめてもの慰みでもありました。

このサンタンドレの墓地には、母親の死後、母親の友達が作ってくれた石碑があります。
「私たちの友達 Nobuko 永遠に」というようなことが書いてあります。

2008年の旅行では、そのお友達の家を訪ねていき、石碑にも足を運びました。
奇しくも母の命日でした。
やはり、この街は想い出がありますので、そこで見る石碑、そしてお友達の心づかいには、胸をうたれるものがあります。

--

さて、まあそんなわけですので、わたくしはこのサンタンドレについては、現存している日本人ではおそらくもっとも詳しいんではないかと思います。
なにしろ、おそらくのべで数ヶ月は滞在していますから、だいたい街のどこに何があるかを把握しています。パン買ってこい、といわれればいますぐパン屋に行って買ってきますし、教会やら役場やらのランドマークも案内できます。
周囲の街からの位置関係もだいたいわかります。今、何も見ずに行けといわれても行けますね。
最寄り駅のアルジュレスから車か最悪自転車を一台貸していただければ、10分程度で着くことができます。

といっても、すごい小さな街なので、1-2日滞在すれば誰だって一瞬で把握できるとは思いますが・・。

--
村役場です。こんな小さな街でも7/14にはセレモニーをやっています。
Dscf0006

--
この街で唯一といっていいか、シンボル的なのはやはり教会です。
こちらも、私が歴史的なことをほとんど理解していないので恐縮ですが、ロマネスク様式の教会としてそれなりに知られているようです。教会の脇には、とても小さなロマネスク博物館があります。
Dscf0004

こちらがロマネスク博物館
Dscf0007

--

小さな街ですから、ちょっと歩くとすぐにぶどう畑です。
Dscf0254 Dscf0255 Dscf0256 Dscf0257 Dscf0261 Dscf0262 Dscf0267 Dscf0268 Dscf0269 Dscf0281

この道は、何度も何度も散歩したり、走ったりしました。
母親が元気なときも、亡くなった後も、ひとりのときも、家族と一緒の時も、自分の足で歩きました。
足が土を踏む感触、吹きわたるかぜ、照りつける日差し、ぶどうの緑。
今でもありありと思い浮かべることができます。
これが、ぼくにとってのフランスです。

Dscf0167

--


大きな地図で見る

| | コメント (2) | トラックバック (0)

« 2008年10月 | トップページ | 2008年12月 »